代理店営業を選択する理由は何か?

組織論

 法人営業を展開するにあたり、選択肢としては販売店を開拓した代理店営業と、他社には依存しない直販営業のいずれかの選択肢があります。では、どちらを選択すべきなのでしょうか?それぞれのメリットとデメリットを見据え、販売戦略をどのように検討していくべきかについて考えてみたいと思います。

代理店営業が機能しやすいビジネスとは?

 皆さんは、代理店営業を展開しようと考えた場合、その動機はどこからきますでしょうか?恐らく一番最初に来る動機は、代理店の販売網の活用だと思います。昔ながらの日本のビジネスモデルで考えると、卸問屋的な発想でしょうか?しかしこの発想は、食品や生活用品のような個人向け商品の展開を考えた場合は当然マッチします。しかし、ここで考えたいのは法人営業を展開する場合です。法人向けに製品を販売する場合、それが特に大手企業に製品を販売しようとした場合は、顧客にコンタクトしてから実際に販売できるまで、かなり色々なことを試行錯誤する必要があります。果たしてこのような場合で、代理店営業を展開することでうまくいくのでしょうか?実はこの問題はビジネスのフェーズと製品の特徴で大きく変わってきます。以下の図を見てください。

 これは、ビジネスのフェーズと契約までのリードタイムから見た代理店営業のマッチしやすさを表した図です。実は代理店営業は、ビジネスの立ち上げ期と、ビジネスの成熟期に非常にマッチしやすいのです。ただし、販売するまでのリードタイムが長くなってしまう製品の場合は、代理店営業がマッチしない場合が多いのです。なぜなら、時間をかけてじっくり売りに行くということは、売れるまでのリソースの持ち出し期間がお互い長くなりすぎて、代理店にとっても自社にとってもメリットが出にくいのです。それであれば、代理店探しに翻弄するより、さっさと自分でお客様を探しに行った方が早いです。しかし、契約までのリードタイムのかかる製品やサービスでも、市場のデファクトを獲得したようなメインストリーム製品にまで成長した場合(ビジネス成熟期)は、代理店販売が機能します。というより、先方から売りたいと言ってくるでしょう。

ビジネス立上げ期と成熟期に代理店営業が機能しやすい理由

 まず第一に、代理店はビジネスの立上げ期には非常にありがたい存在です。立上げ期はまだまだ社内のリソースも足りないですし、何よりも自分が狙っている市場のお客様をすでにその代理店が掴んでいる場合が多いのです。その場合は、代理店とのアライアンスで市場参入もしやすいし、何よりも自分達に不足しているリソースを代理店がカバーしてくれます。これにより、ビジネスの立上げが意外とスムーズに行きましたという方も多いのではないでしょうか?

 しかし、そのビジネスが軌道に乗り始めると、メーカー側はもっとビジネスを拡大したくなり、自社製品やサービスのポートフォリオを大きくしたくなってきます。実は、この領域では代理店営業よりも直販営業の方がマッチしやすくなってくるのです。なぜでしょうか?ここには大きく2つの理由があります。

  • ビジネスがうまく行き始めると、直販に切り替えた方が利益率が高くなり、直販志向が芽生えてくる。
  • ビジネスがうまく行き始めると、さらなる成長を目指して、製品やサービスのポートフォリオを広げようと考える。しかし、自社で考えたポートフォリオの全てを代理店が受け入れられない。

 やっぱりビジネスがうまく行き始めると、優秀な人材も採用しやすくなり、社内のリソース不足も解消されてきます。そうすると、会社にも実力がついてきて、利益率のもっと高い、直販志向が芽生えてきます。そして、ビジネスがうまく行き始めると、当然製品のポートフォリオも増やすようになってきます。しかし代理店には代理店側のポートフォリオ戦略があります。そうすると、自社のポートフォリオ戦略と代理店のポートフォリオ戦略にミスマッチが生じてきて、代理店が味方であり、競合にもなりうるようになってくるのです。実は、ここに大きく乗り越えるべき壁が存在します。

 しかしそれを乗り越えてみた先には、再度代理店営業がマッチしやすい状況が再来します。それは、先ほども申し上げた、その製品が市場のデファクトを獲得し、メインストリーム製品になった時です。その時には、こちらから声をかけなくても、代理店の方から 「売りたい!」 と、寄って来てくれます。

外資系企業がスタートアップ時に代理店営業を選択する理由

 日本企業が日本でビジネスをスタートする場合に、最初から代理店営業を視野に入れるべきかどうかは、私は多くの議論の余地があると思います。しかし、外資系企業が日本に参入するときは必ず代理店営業を最初に選択します。その理由は単純に以下の2点だけです。

  • 言語の問題
  • 初期投資を下げるリスクヘッジ

 日本は完全に日本語だけに固執します。。最近は各種翻訳サイトも精度が素晴らしいので、そんなに日本語にこだわらず、英語で良くないですか?と、思うのですが、やっぱり日本人は日本語にこだわります。。ですので、代理店がその言語の壁を吸収してくれるのです。資料を翻訳したり、日本語でサポートを提供したりしてくれるのです。また、最初から沢山の社員を雇ってビジネスを開始しても、ビジネスがうまく行くかどうかがわかりません。ですので、最初は社員数人のみでオフィスを立ち上げます。そして代理店の協力を仰ぎながらビジネスを開始するのです。理由はただこれだけです。

最後に

 代理店営業と言っても、そのビジネス形態には様々なものがあります、ここで書かせて頂いたのはその多くある側面の一部です。皆さんの製品特性や対象市場などによって、この論点とは全く違う側面もあることだけは申し上げておきたいと思います。最後まで読んでいただきまして、ありがとうございました。

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